再生医療×美容

肌の老化プロセスを押さえたうえで、線維芽細胞治療・PRP療法・ACRS・VFD療法、そしてエクソソームや幹細胞治療まで、美容領域で使われる再生医療の技術を整理します。

今回は再生医療×リハビリテーションの続編になります。

再生医療の技術は純粋に医療に活用されるだけでなく、美容にも活用されています。

今回はいくつかのアプローチを紹介させてもらいますね。

線維芽細胞治療

まずは線維芽細胞治療について説明していきますが、最初なので老化プロセスについても簡単に触れつつ治療法の説明をしていきますね。

肌の老化プロセス

肌の老化に影響が大きいのが「光」と「加齢」だと考えられており、それぞれ「光老化」「自然老化」と言います。

光老化はUV-A・UV-Bと言われており、それぞれ肌の奥の真皮や表面の表皮それぞれに悪影響を及ぼします。

自然老化は肌の内部で産出されるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といったハリや潤いのもととなる成分が減少することによって肌が乾燥したり、やせたりして老けた印象を与えるようになってしまいます。

このような症状に対して近年再生医療の技術が活用されてきているので、ここから詳しく紹介していきますね。

線維芽細胞治療の流れ

線維芽細胞は肌のハリや弾力のもととなるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンをつくり出す細胞ですが、こちらを注入する治療になります。

線維芽細胞治療はメスを使って耳の後ろの皮膚を8ミリ×5ミリほどの大きさで切り取ります。そしてこの皮膚から取り出した線維芽細胞を5〜6週間かけて培養し、約1億個に増やします。

その後、注射によって肌に入れることで美容効果を及ぼします。

線維芽細胞治療は厚生労働省に提供計画書を受理された医療機関でのみ実施できる再生医療になるので、実施する際はしっかり調べた方がよさそうですね。

効果

効果があらわれるまでの時間には個人差がありますが、1〜3ヶ月程度で肌への変化を感じる人が多いようで、2〜3年ほど継続し、以降も老化が緩やかになることがわかっています。

やはり若い方や皮膚ダメージが少ない方の場合、線維芽細胞が若いうえに数も多いため実感するほどの効果は出にくいこともあります。

また年齢を重ねた場合は培養前の線維芽細胞がすでに老化しているため、機能がやや低下した細胞を注入することになり、効果は少し落ちる可能性も考えられますね。

よって細胞バンクを活用して若いうちに線維芽細胞を採取して保存しておくことが良いとも考えられています。

PRP療法

続いてPRP療法ですが、こちらは多血小板血漿(Platelet Rich Plasma)という血小板を濃縮したものを使う療法になります。

治療を行う際には肌診断やカウンセリングをした上で採血を行い、約15分遠心分離機にかけてPRPを取り出せるようになります。

その上で患部に注入することでシワやたるみの改善などの効果を目指して実施する感じですね。

PRP注入後は肌に熱や赤みが発生する場合もあるため、クーリングを行って治療終了になります。

ACRS療法

自身の血液から採取した血清にあるACRS: Autologous Cytokine Rich Serum(自己血サイトカインリッチ血清)を肌の内部に注入することで再生を促す治療をACRS療法と呼びます。

サイトカインとは細胞から分泌され、細胞間の情報伝達を担うタンパク質のことで、先ほどのPRP療法と組み合わせることでさらなる効果を発揮すると考えられています。

またその前の線維芽細胞治療との組み合わせも良い効果があると考えられているので近年注目されつつあるんです。

ただACRS療法は血液を3時間保温することで成長因子とサイトカインをたっぷり放出させ、その上で5分間遠心分離機にかける必要があるので手間がかかるのが難点ですね。

VFD療法

VFD(Valuable Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry)療法はPRP療法を発展させたエイジングケア治療のひとつで、PRPから特殊技術で成長因子を取り出し、高濃度に調整してフリーズドライしたもののことです。

ここでは特にIL-1Raと呼ばれる白血球由来の抗炎症サイトカインはACRS同様に肌の老化対策として効果があると考えられています。

効果のあらわれ方には個人差がありますが、1ヶ月後くらいから変化を実感でき、その後半年〜1年間程度持続することが多いです。

エクソソーム - 細胞外小胞

エクソソーム - 細胞外小胞に関する詳しい説明は日本再生医療学会のページに載っています。

エクソソーム - 細胞外小胞とは何なのか?その効果や副作用は?など情報をまとめようと思います。

エクソソーム - 細胞外小胞とは?

美容で用いられているエクソソームはそもそもそれ単体で用いられるというよりは、細胞外小胞というものが重要な役割を担っています。

細胞外小胞(エクソソーム・マイクロベシクル・アポトーシス小体)の種類と大きさを比較した図

ちなみにエクソソームは、Philip D. StahlらとRose M. Johnstoneらによって1983年に哺乳類の成熟中の網赤血球(未成熟の赤血球)中に発見され、1987年にJohnstoneらによって「エクソソーム」(exosome)と名付けられました。

エクソソームは細胞と細胞のコミュニケーションの架け橋の役割を担っており、エクソソーム内部には新たな細胞を作り出すための情報をもつ核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNAなど)やたんぱく質が含まれているため、それによる美容効果があると考えられています。

種類と効果

エクソソームにもいろいろ種類があり、脂肪由来、歯髄由来、臍帯由来あたりが一般的です。

エビデンスはそこまで高くないものの一般的にそれぞれどのような効果があると考えられているか、という内容を以下にまとめておきます。

脂肪由来:肌の抗酸化作用、アンチエイジング、疲労回復、男性機能回復、睡眠障害改善、血行改善、育毛・発毛促進 歯髄由来:糖尿病、慢性的な痛みやしびれ、肝機能障害、末梢神経障害、疲れやすさ、シワの改善や予防、肌の抗酸化作用 臍帯由来:上記と比較すると組織修復や免疫抑制、組織治癒、抗炎症作用に優れている

個人差はあるものの、体の調子がよくなった・集中力が続くようになった、というような効果を感じる人もいるようです。

その他

その他は再生医療とは少し異なるものにはなりますが、美容において注目されつつある手法を紹介しておきます。

脂肪由来幹細胞治療

こちらは患者自身の腹部の脂肪などから採取した幹細胞を培養し、点滴または注射によって体内に入れることで組織の修復再生を促す治療法になります。

修復の精度を高めてくれるのはホーミング効果というもので、損傷や炎症を起こしている細胞や組織はシグナルを発しているんですが、幹細胞はそのシグナルをキャッチして血管内を移動し、修復が必要な部位に集まる特性のことを言います。

こちらの効果はすぐにあらわれるものではなく14日後くらいから少しずつ実感できるようになり、効果の持続は2〜3年ほどであることが多いため定期的に投与を行うことがおすすめされるようです。

NK細胞療法

NK(ナチュラルキラー)細胞は血液に含まれる免疫細胞の一種であり、全身をパトロールしながらウイルスに感染した細胞を探索、発見すると攻撃を仕掛けて退治するような役割を持っています。

NK細胞療法を行う際には30〜50cc程度の血液を採取して2週間程度かけて細胞培養することでNK細胞を約100倍〜1000倍に増やし、さらに活性化させます。そうしてできたNK細胞を生理食塩水に入れて点滴で体内へと戻します。

NK細胞療法はもともとがん治療のために用いられていたんですが、一度の点滴で約10億個ものNK細胞を体内に補充することができ、それによって健康維持や美容のためにも効果が示され始めているようです。

参考文献・出典