足部の科学

足部アーチを支える靭帯と内在筋の役割を整理し、扁平足・外反母趾といった問題、注目されつつある足趾把持力、そして足部から膝・股関節へ波及する運動連鎖まで扱います。

足は二足歩行で活動する人が唯一地面と接している部分であり、運動や姿勢保持において重要な役割を持ちます。

ただ足部自体に痛みや障害を伴うこともあれば、足部の状況によって膝などへの悪影響が出ることもあります。

そこで今回は足部の機能や各種障害の予防・改善に関するアプローチをまとめようと思うので、参考にしてみてください。

足部安定化の機構

基本的な解剖については今回はあまり触れませんが、足部には28個の骨と様々な筋肉・腱があって1つの構造体を作っています。

そこで特徴的なのがアーチ構造。

立位での運動を行う際に衝撃吸収をするために重要な仕組みなんですが、このアーチがどのように構成されているかを理解しておくと良いかと思うので、まず共有していきます。

内側縦アーチの保持に関わる足底靭帯

アーチの中でも有名なのが内側縦アーチと呼ばれるもので、一般的に言うと土踏まずの部分になります。

このアーチ形成に大きく関わっているのが足底腱膜で、足底腱膜を切離すると内側縦アーチの剛性が約25%も低下してしまうとも報告されています。

そして足底腱膜を切離してしまうと、足底踵舟靭帯に約2倍・長足底靭帯と短足底靭帯に約3倍ものストレスがかかってしまうことも報告されているので、この足底靭帯の重要性がよくわかります。

ただ内側縦アーチの保持には靭帯だけではなく、筋肉も関わっているので以下でそれについても触れていきましょう。

筋肉によるアーチ保持

足部には内在筋がいろいろ存在しており、背側では表層・深層、底側では4層に分けられています。

[背側] 表層:短母趾伸筋、短趾伸筋 深層:背側骨間筋

[底側] 第1層:母趾外転筋、短趾屈筋、小趾外転筋 第2層:足底方形筋、虫様筋 第3層:母趾内転筋の横頭・斜頭、短母趾屈筋、短小趾屈筋 第4層:底側骨間筋

ここで内果後方下部で脛骨神経に神経ブロックを行うことで座位から立位になった際の舟状骨の下降が増大したり、足趾の屈曲運動を繰り返すことで筋を疲労させることで舟状骨の下降が増大するような報告もなされています。

このように足部のアーチ形成には靭帯および筋が関わっていることは分かったと思います。

足部における問題

改めてここでは足部における問題をいくつか整理していこうと思います。

扁平足

足における問題を取り上げる際によく出てくるのが扁平足。先ほど出てきた内側縦アーチが落ち込んで足底が扁平になっている状態のことですね。

一応問題として挙げましたが扁平足だからと言ってみんなが痛みを抱えていたり、その他の症状が出てくるとは限りません。

内側縦アーチがしっかりあれば立位・歩行・ジャンプ動作などを行う時に衝撃を吸収してくれるので足部へのストレスは軽減されますが、もし立位で行う各種運動の強度が少なければ扁平足だったとしても症状が出ることは少ないでしょう。

よって対象としているクライアントの運動強度によって扁平足であるが故に痛みなどの症状が出てくるのであればアプローチが必要ということになります。

そしてこの扁平足を改善するためのアプローチを考えた時に原因が靭帯 or 筋肉なのか、はたまたもともとの関節弛緩性が要因なのかによって対処法も違ってくるのでその都度対策を考えられると良いかと思います。

外反母趾

もうひとつ足部の問題としてよく挙げられるのが外反母趾。

外反母趾に関してはガイドラインが示されており、最新版は2022年に出た第3版になります。

外反母趾は母趾中足趾節関節(MTP関節)で母趾が外反した変形で、外反母趾角(HV角)が20°以上だと定義されています。

この第一中足骨頭の内側の軟部組織あるいは骨性隆起のことを「バニオン(bunion)」と呼び、ここに痛みを感じる方が多くいるのが現状です。

原因は様々なものがあるんですが、先ほどまで出てきた内側縦アーチ以外に前足部には前アーチと呼ばれる部分があってそこが広がっている症状を開張足と呼びます。

外反母趾はこの開張足と併発することが多いので、よくアプローチの対象と考えられることが多いですね。

足部の問題解決を考える時の新しいアプローチ

ここまでで足部のアーチや問題について触れてきましたが、足部の筋の重要性が見えてきたと思います。

そこで最近注目されてきている足趾把持力というものに注目してみようと思います。

足趾把持力

足趾把持力は簡単に言うと足の握力のような感じですね。

手の握力はよく測る機会があると思いますが、実は最近足の指の握力を測る機械も出てきているんですよね。

足趾把持力を測定する機器の外観

具体的な測り方としては以下のような感じで使うと安定した結果が得られやすいです。

足趾把持力測定時の姿勢と足部のセッティングを示す図

その足趾把持力と様々な項目との関連が最近明らかになってきているのでいくつか紹介しますね。

足趾把持力と足部形状の関連

主なものとしては足部の形状との関連。

フットプリントと呼ばれる測定をすると足の形状の評価ができるんですが、それと足趾把持力との関係を調べた研究があります。

フットプリントによる足部形状の分類(正常足・扁平足・凹足)を示す図

その結果一般的な形状の人に比べて扁平足の方は足趾把持力が弱い傾向が認められました。

足部形状別の足趾把持力を比較したグラフ。扁平足群で値が低い

始めの部分で足部の筋肉とアーチの関係について触れましたが、やはり筋肉によるアーチ形成の効果があるのでこのような結果になったことが予想されますね。

その他の関連性

足趾把持力はまだ新しい概念なのでその他の関連性としては研究としてエビデンスが示されているもの、まだ仮説程度のもの、などいろいろありますが足趾の筋肉と関連があるものとしては以下のようなものが考えられています。

  • 横アーチの形状
  • 全体的な身体機能
  • バランス能力
  • 歩容

これまで足部へのアプローチを考えた際に施術やテーピング、インソールなどがよく活用されていたと思いますが、このような足趾把持力に着目することで新しい切り口が見えてくることもあると思うので参考にしてみてもらえたらと思います。

足部から波及する問題

冒頭で述べた通り、足部は二足歩行で生きている人が唯一地面と接している部位であり、足の状況は膝・股関節・姿勢など他の部位へも波及します。

ここでは足と他の部位との関連性をまとめてみますね。

前足部からの影響

ここはまずわかりやすいところだと思いますが、前足部の内反が増大していると舟状骨が降下し、後足部の外反が増大します。

そして下腿に対して前足部が内反位にあると、ジャンプ着地時に前額面で膝関節が股関節や足部に対して内側に位置するアライメント(knee-in)になりやすい。

このように前足部が他の部位に影響するのはよくあることなので意識しておくと良いでしょう。

足部からの運動連鎖

先ほどの前足部とknee-inにも関連しますが、距骨下関節が回内すると、下腿は内旋するとともに前方・内側へ変位する、より近位の関節では、大腿も同様に内旋とともに前方・内側への変位を生じ、骨盤は前方回旋する。

そして下腿と大腿の間にある膝関節の肢位は屈曲・外反・内旋位、大腿と骨盤の間にある股関節は屈曲・内転・内旋位となる。

このように足から近位に向かう運動連鎖を上行性運動連鎖と呼ぶこともあります。

全身のバランス

最後はバランスに関係するトピックですが、立位姿勢を保持することにおいても足部の機能は重要です。

まず両脚立位の時よりも片脚立位をとった方が足部の内在筋が働くことは研究でも報告されているので、まずはここの影響があることはよくわかります。

あとは足底の感覚もバランスに影響することも報告されています。

具体的には、高齢者がインソールに凸凹のあるシューズを履くことで重心動揺が減少するような感じですね。

このように足部にアプローチする際に筋肉や靭帯を意識するだけでなく感覚刺激に注目するというのも新しい切り口かと思うので参考にしてもらえたらと思います。

参考文献・出典