頭痛対策のエビデンス(主に鍼に着目して)

頭痛の国際分類と二次性頭痛のレッドフラッグ(SNNOOP10)を押さえたうえで、片頭痛・緊張型頭痛に対する鍼治療のエビデンスとその作用機序、ニューロモデュレーションまで扱います。

今回はセラピストとして対応することも多い頭痛についての学びを深めてもらえたらと思います。

頭痛はよくある症状ではあるものの、裏側にリスクの大きい疾患が潜んでいる場合もあるためセラピストとして関わる時にも注意が必要な症状の1つになります。

今回は頭痛の理解を深めつつ、治療に関するエビデンスも紹介していくのでぜひ勉強してみてください。

頭痛の種類

一言に頭痛と言っても種類がいろいろありまして、国際分類だと以下のような形になっています(頭痛診療ガイドライン2021より引用)。

頭痛の国際分類。第1部の一次性頭痛、第2部の二次性頭痛、第3部の有痛性脳神経ニューロパチーに分かれる

この中で第2部・第3部にあたるようなタイプでは医療機関において治療が必要なレベルになるので、セラピストとして関わるのは主に第1部の一次性頭痛というようなものになると考えられます。

ここで臨床において第2部の頭痛をいち早く鑑別することも重要なので、レッドフラッグの基準になっているものも共有しておきますね。

[SNNOOP10 リスト|二次性頭痛のレッドフラッグ]

① S:Systemic symptoms including fever — 発熱を含む全身症状(例:項部硬直、意識レベルの低下、神経脱落症状) ② N:Neoplasm in history — 新生物の既往 ③ N:Neurologic deficit or dysfunction — 神経脱落症状または機能不全(意識レベルの低下を含む) ④ O:Onset of headache is sudden or abrupt — 急または突然に発症する頭痛 ⑤ O:Older age (after 50 years) — 高齢(50歳以降) ⑥ P:Pattern change or recent onset of headache — 頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛 ⑦ P:Positional headache — 姿勢によって変化する頭痛 ⑧ P:Precipitated by sneezing, coughing, or exercise — くしゃみ、咳、または運動により誘発される頭痛 ⑨ P:Papilledema — 乳頭浮腫 ⑩ P:Progressive headache and atypical presentations — 進行性の頭痛、非典型的な頭痛 ⑪ P:Pregnancy or puerperium — 妊娠中または産褥期 ⑫ P:Painful eye with autonomic features — 自律神経症状を伴う眼痛 ⑬ P:Posttraumatic onset of headache — 外傷後に発症した頭痛 ⑭ P:Pathology of the immune system such as HIV — HIVなどの免疫系病態を有する患者 ⑮ P:Painkiller overuse or new drug at onset of headache — 鎮痛薬使用過多もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛

かなり細かくなりますが、ざっと頭に入れておくとリスクに早く気づけると思うので意識しておいてもらえたらと思います。

片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛

日本における頭痛の主な3つはこれらだと考えられていて、それぞれの有病率は、片頭痛 8.4%、緊張型頭痛 22.3%、群発頭痛 0.4%という調査がされています。

そしてそれぞれの症状はざっと以下のような感じ。

片頭痛:頭の片側や両側がズキズキ痛む。吐き気を伴うような頭痛が一定の期間をおいて繰り返す。月に1〜2回、多いときには週に2〜3回発作的に強い頭痛が起こる。脈打つような痛みで、体を動かすと痛みがひどくなり、悪心・嘔吐をともなったり、音や光に敏感になります。20〜40代の女性に極めて多く見られるのが特徴。

緊張型頭痛:肩や首すじのこりとともに、頭が締め付けられるような痛み。毎日のようにおこる頭痛だが、それほど強い痛みではなく、仕事や日常生活ができなくなるようなことはない。精神的、肉体的、どちらのストレスも引き金となり多くの場合「頭に輪をはめてしめつけられるような」と表現される頭痛を起こす。

群発頭痛:激しい痛みが片側の目の奥に起こる。「目の奥をえぐられるような」「柱に頭をぶつけたくなるような」と形容されるような激しい痛みが、片側の目の奥に起こるのが特徴です。涙が出て、目が充血し、鼻水がでるなどの症状を伴う。多くの場合、年に1〜2回、期間は1〜2ヶ月、毎日のように激しい頭痛が繰り返し起こります。

それぞれのメカニズムについてはまだ解明されておらず、片頭痛に関しては神経・血管・三叉神経など、緊張型頭痛に関しては末梢性・中枢性それぞれの疼痛メカニズム、群発頭痛に関しては内頸動脈の周囲や三叉神経の過剰興奮が副交感神経の活性化を起こす、など様々な要因があると考えられています。

症状によっては薬物療法が有効な場合もありますが、非薬物療法として考えられているものは以下のようなもの。

行動療法:リラクセーション法、バイオフィードバック療法、認知行動療法、催眠療法 ② 理学療法:運動、物理療法 ③ ニューロモデュレーション:経頭蓋磁気刺激、三叉神経刺激、迷走神経刺激 ④ 健康食品・サプリメント:コエンザイムQ10、ナツシロギク(feverfew)、マグネシウム(Mg)、ビタミンB2(リボフラビン)

では以降において今回主に取り上げる鍼治療と合わせて物理療法についても少し紹介しますね。

頭痛対策のエビデンス

鍼治療のエビデンス

科学的な知見にはエビデンスレベルというような段階があるのですが、Cochraneという文献サイトにおいては質の高い研究を集めた結果が掲載されています。

そこにおいて鍼治療 × 片頭痛・緊張型頭痛に関するエビデンスが報告されていました。ここではそれぞれ中等度の効果があると示されています。

基本的にそれぞれ6回以上の治療セッションによって改善効果があるという結果の研究がいろいろ報告されているようでした。

ただこれらのレビュー文献内で示されているのは片頭痛・緊張型頭痛どちらにおいても「経穴、痛点またはトリガーポイントへの鍼挿入」とされていて細かい鍼の太さ・長さ・刺す場所の設定までは把握しきれません。

ただ頭痛のメカニズムとして神経・血管によるものが多く考えられていることから、鍼によって神経への刺激が減ったり、血流の改善が起こるといったことが頭痛の軽減に繋がってくる可能性が考えられます。

もう少し他の細かい機序については他の文献を見ながら考察していきます。

鍼治療が頭痛に効く機序

まずは改めて動物実験における研究を取り上げてみます。

鍼刺激が全身血圧・大脳皮質血流・眼底血流・骨格筋血流に及ぼす効果をまとめた図

こちらにおいては、以下のような内容が掲載されていました。

  • 全身血圧に及ぼす鍼の効果
  • 大脳皮質血流に及ぼす鍼の効果
  • 眼底血流に及ぼす皮膚刺激の効果
  • 骨格筋血流に及ぼす鍼通電刺激の効果

細かい機序についてはここでは書ききれませんが、ラットに対する鍼刺激によって様々な効果があることが示されてきておりそれが人に対しても起こる可能性がありますね。

頭痛に対する鍼治療の臨床研究の概要を示した図

緊張型頭痛・片頭痛それぞれに対する鍼の作用機序を整理した図

これらの論文を参考にすると、緊張型頭痛に関しては頭痛を起こす頭部筋群の緊張緩和、片頭痛に関しては前兆に関与する大脳皮質拡延性抑制(CSD:Cortical Spreading Depression)の発生を減らす可能性が述べられています。

ただ頭痛に対してどこに鍼を打つか、という点に関しては研究によって違いもあるので今後も要検討ですね。

頭痛に対する鍼治療で用いられる経穴を研究別に整理した表

他の物理療法

鍼以外の物理療法としてはニューロモデュレーションというものが比較的エビデンスが高いとされています。

見た目としては脳を刺激するようなものになります。

経頭蓋磁気刺激装置などのニューロモデュレーション機器の外観

細かく見ていくと周波数や電流の強さによっていろいろ種類がある感じ。

具体的なデバイスも各社から出てきているので、もし導入する際は比較検討していけるといいですね。

まとめ

今回は頭痛対策のエビデンスということで、主に鍼治療を取り上げてみました。

実際の臨床の中では鍼治療や物理療法だけでなく、姿勢へのアプローチや認知行動療法のような心理面へのアプローチも併用すると思いますし、今回の情報も参考にしながらクライアントにとってベストな方法を模索していってもらえたらと思います。

参考文献・出典