今回は勉強した内容を脳に定着させるコツのようなものをお伝えできたらと思います。
そしてさらに学習の質を高めるためのエビデンスについての情報もまとめておきますね。
今後もセラピストとして活動する中でいろんな勉強をしていくと思いますし、ぜひスキルアップのために役立ててもらえたらと思います。
脳における学習の流れ
まずは脳において学んだことを実践に移す流れについて紹介してみようと思います。
- 獲得する:情報を目や耳から取り込む段階です。読書や講義を受けるなどはすべて「獲得」の一部で、ここでは正確な情報を最も圧縮された形で手に入れるのが目標になります。
- 理解する:理解とは、獲得した情報をしっかり解釈するようなことです。自分の知っている知識とも組み合わせて身につけるイメージを持ちましょう。
- 探索する:探索の段階は、獲得して理解した後自分の活動にどう活かせるか考えてみます。だんだん学んだ情報の実行に繋げていきます。
- 修正する:このステップでは、頭に出来上がったネットワークにエラーがないか調べます。学んだ情報をそっくりそのまま自分の活動に活かせない場合もあるでしょう。そこを自分なりに使えるまで修正します。
- 適用する:適用の段階では、学んだ情報を実際に実行してみます。ここでさらに理解が深まり、自分独自の知見へと発展していきます。
このような流れで学んだことを実践に移してもらえたらと思うんですが、これに加えてさらに学習の質を高めるコツについて紹介できたらと思います。
バイセラライゼーション
バイセラライゼーション、という言葉を聞いたことあるでしょうか?
こちらは「内臓(Visceral)」と「視覚化(visualization)」をくっつけた言葉で、ビジュアライゼーションをさらに一歩進めたイメージ化を意味します。
バイセラライゼーションをする場合まずは「覚えたい情報」を視覚化しましょう。続いて、最初に浮かべたイメージに他の感覚を加えていきます。例えば人体解剖について学ぶのであれば、見た目のイメージだけでなく、色味、触った感覚、匂いなどもイメージ、そしてそれに対して自分はどのように感じるかまで想像していきます。
このようにイメージにまつわる感覚、自分の感情まで加えていくのがバイセラライゼーションの基本です。
さらにもう少し細かい流れについてもまとめていきますね。
- バイセラライゼーションしたい情報を決める:人体解剖、施術の方法、運動指導など、学びを深めたい情報を決めます。
- 情報の視覚的なイメージを浮かべる:続いて、その情報の視覚的にイメージします。人体各組織の位置関係や表面的な見た目などを思い浮かべていきます。
- 感覚の情報を付け加える:最初に浮かべた視覚的なイメージに、別の感覚を加えてみてください。触った時の質感や温度、触った時に発する音・声、匂いなど、見た目だけでない感覚も想像してみます。
- 感情の情報を付け加える:そのイメージについて、自分がどのような感情を加えられるかを考えて、さらにイメージを洗練させていきましょう。
- イメージをくり返す:完成したバイセラライゼーションをすぐに思い浮かべられるようになるまで、そのイメージを何度も脳内でリピートしましょう。
このような流れで情報を整理していくと、学んだ専門的知見がより深く身についていくでしょう。
そしてさらに脳に定着させるコツについての情報を共有していきます。
脳に定着させるコツ
ここでは人の感覚に注目して脳に定着させるコツについて紹介してみますね。
視覚の調整
学習する部屋には、あまりにもいろいろなものを置くのは良くないと考えられています。過度に装飾された教室または学習室は、「認知負荷」と呼ばれる状態(つまりワーキングメモリーシステムが圧倒され、脳が新しい情報を処理し、記憶することが難しくなる状態)を引き起こす可能性が大きくなる。そのため、勉強をする部屋にはほぼ何もないのが理想ですね。
また現時点で、部屋の環境として学習に最適な光源は自然光であると考えられています。
学習の前は10分ぐらい屋外を散歩し、学習室のなかでは蛍光灯をやめ、その他の照明を使って、できるだけ明るい光で室内を満たすほうがよいと考えられています。
そのためには、窓に近い場所に座ったほうがいい可能性もあります。ただし、一部には明るさが少ない環境の方を好み、より照度が低い環境でうまくいく人もいるので、これは自分の脳がどう反応するかをセルフチェックしながら進めてみましょう。
嗅覚の調整
嗅覚もまた学習に大きな影響を与えます。香りが脳に強い影響を与える理由の1つは、嗅球(鼻の近くにある脳の突起で、匂いを処理する)が大脳辺縁系(感情や興奮の度合いに関係する)に近いから。
嗅球への刺激が強いアロマには、レモン、ペパーミント、オレンジ、ローズマリーなどがあり、これらの多くは、注意力、認知力、記憶力を向上させることが示されています(まだ確定的なデータはない状況ではあるものの)。また、ペパーミントのようにメントールを含むオイルは、脳に多くの酸素を供給してくれる可能性があります。
逆に、ラベンダー、カモミール、ローズ、ベルガモットなどのオイルは、より心を落ち着かせるアロマで、特にラベンダーは、ストレスを軽減し、睡眠を改善する働きがあるため、学習後のリラックスに使うほうが良いでしょう。
空気中の汚染物質の問題をクリアするには、室内の換気をするのが一番良いとされています。さらには、学習室に植物を置くと、空気中の汚染物質をろ過する(さらには吸収する)のに役立つと考えられています。
室内の空気清浄に最も効果的な植物は、オリヅルラン、スパティフィラム属、バンブーパームなどがあります。これらの植物は、室内における微生物の存在量と多様性を大きく増やし、高い確率で毒素を吸収してくれる可能性が大きいとされています。
聴覚の調整
学習環境における音声の存在は、言語処理能力と記憶能力に大きな影響を与えるとされています。事実、空港や駅など、断続的に大きな音が発生する場所の近くにある学校では、生徒の学習効率が大きく下がることは何度も示されています。
外部から聞こえる音声のほかにも、空調設備、コンピューターのファン、その他の電子機器の音声も、注意をそらす原因となります。また、音は大きければ大きいほど、学習する人への悪影響が大きくなります。これは、音量が学生の中枢神経系に与える影響によるもので、刺激が強すぎるために軽いストレスとなり、認知能力が損なわれてしまうのだと考えられています。
そのため、自分の学習環境に騒音が多い場合は、窓やドアを閉めて音を最小限にするか、ノイズキャンセリングは必須となるでしょう。それと同時に、室内で使っていない機器の電源は切っておき、周囲の人間(家族や友人)にも、自分が勉強をすることを伝え、ノイズを最小限にしておくように頼んでおくとよいかもしれません。
触覚の調整
最も一般的な要素は「温度」で、一般に学習に理想的な温度は、20〜23度が理想だとされています。体が熱すぎると、認知機能と生理機能の両方が低下し、注意力が低下し、そのせいで学習のパフォーマンスが低下する現象は何度も確認されています。
一方で、体が冷えすぎると、集中力、警戒心、記憶力、推理力に影響が出るとされています。ただし、これは男女差や個人の好みもあるので、最適な温度は自分で確かめる必要があるでしょうね。
以上のように、学習する環境を意識することでより自分のレベルアップに繋がる可能性が高まるでしょう。
結局何を学ぶか
ここまでは受け取った情報を整理して、どのように実践に活かすか、ということに着目してきましたが最後に結局どのような情報を学んでいく必要があるのか、という観点にも触れてみようと思います。
今後もセラピストとして活動する上ではいろんな勉強をしていくと思いますが、誰しも全てを頭の中に入れることはできません。
そのため自分の専門性を決めたり、特定の分野における知見を深めていくことも必要になってくると考えられますが、その際にはやはりエビデンスの理解というものが重要になってきます。
エビデンスレベル
改めてエビデンスレベルとは以下のような図で表されるものです。

まずは下の方の専門家の意見や症例報告、というのがわかりやすいと思いますが、これが必ずしも正しいわけではないということは理解できると思います。
例えば有名なセラピストの人が「この治療法が有効だと思う!」「自分の関わった症例ではとても良い効果が出た!」と言っても必ずしも自分の関わるクライアントでも同じ効果が出るとは限りません。
そんな時に同じノウハウを共有してその有名なセラピストだけでなく、他の学んだ人でも同じような効果が出た、また他の治療法と比較してもより良い効果が出ている、というような実績があれば信憑性がより高まっていきます。
それがエビデンスレベルの上にあるような介入研究というようなもの。
そして質の高い介入研究の結果が集まったものがガイドラインになったりするわけなので、まずはここをしっかり学ぶのが重要でしょうね。
Evidence Based Medicine(EBM)
エビデンスについて学ぶ時によく聞くのがEvidence Based Medicine(EBM)という言葉だと思いますが、これは単にエビデンスに基づいたアプローチを取れば良いというものではありません。

上の図にもある通り、研究によるエビデンスに加えて臨床的状況と環境・患者の価値観、というものを考慮する必要があると考えられています。
例えば何らかの物理療法の機器が治療のエビデンスとしてはかなり高いとは言えども、今自分が活動している治療院などでその機器がない場合もありますよね。
そんな時は自分の身の回りにある別の機器やアプローチで応用したりすることで、できるだけエビデンスの高いアプローチに繋げることも意義があるわけです。
またクライアントの好みや価値観として、エビデンスの高いとされるアプローチよりも他の方法を求めるのであれば、無理にエビデンスの高いものを選ばなくても良いと思います。
よって新しい知見もしっかり学びつつ、目の前のクライアントにとってベストな方法を選ぶというのがセラピストの腕の見せ所だと思うのでぜひ意識していただけたらと思います。
まとめ
今回は“エビデンスに基づいた学習のコツ”ということで勉強をする時のコツや学ぶべき情報の選び方について共有させていただきました。
医学は日進月歩で来年もまた新しい知見がいろいろ出てくると思いますが、その際に正しい情報は何なのか、自分の関わるクライアントにとって役立つ情報は何なのか、ということを常に考え続けることが大事だと思います。
今後もセラピスト活動に役立つ情報を届けていけたらと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。