においの科学

においを感じる仕組みと快・不快の判断軸を押さえたうえで、口臭・体臭が生じるメカニズムと、唾液や汗腺に着目した具体的なケアの方法を整理します。

自律神経の科学でも触れたように嗅覚刺激は自律神経に影響しますし、セラピストとして活動していると自分のにおいに気を使うことも重要だと思います。

今回は普段そこまで深く意識することは少ないかもしれないけど意外と奥深いにおいの科学に関する情報を共有していきますね。

においを知る

まずはにおいとは何なのか?体ではどんな仕組みで感じるのか?といったあたりを共有していこうと思います。

においとは?

“におい”はとても主観的なもので、誰かにとってはいいにおいでも他の人にとっては不快に感じることもあるようなものですよね。

このにおいはまず、嗅覚で感知できる刺激の総称になります。

におい物質の種類は地球上に20万〜40万種類もあると言われており、実用性のあるものだけでも2000種類はあると考えられています。

このにおい物質は自然なもの、人工的なもの、いろいろありますが、その刺激によって体に影響を及ぼすことがあるわけですね。

それでは次はにおいを感じる仕組みについて見てみましょう。

においを感じる仕組み

鼻の奥にはにおいを感知するための嗅細胞と、嗅細胞からホウキのように伸びている嗅毛があります。

ちなみに嗅毛は鼻毛とは違って目には見えないものです。

鼻腔内の嗅細胞と嗅毛、嗅球の位置関係を示す図

人では嗅細胞は約500万個あって嗅毛は十数本ですが、犬は約2億個の嗅細胞を持ち、1細胞あたり数十本の嗅毛を持っています。

におい情報を感知する嗅覚受容体も人では350種類ですが、ネズミや犬では1000種類もあるとのこと。

においの快・不快

あとはにおいの快・不快を感じる4つの判断軸を紹介しておきます。

質:におい分子の種類や組み合わせ 強度:においの強さ 認容性:好みかどうか 広範性:どれほどの濃度か

このような軸によって人はにおいの快・不快を判断しているので、自分や周りの人の感覚を意識しながらにおいについて考えていくと、より快適な空間・関係性を作っていけるきっかけになるでしょう。

人から発するにおい

それではここからは人が発するにおいについて深掘りしてみましょう。

自分自身に体の不調があると口臭や体臭に変化が起きたり、知らず知らずのうちに周りへ不快感を与えてしまうと良くないのでこれを機に見直せると良いですね。

口臭

口臭の一番の原因は口腔内環境の悪化によるものですが、日本人の成人の80%はなんらかの程度の歯周病があるという報告もあるので、特に注意が必要です。

健康な人の口腔内には約700種類、歯磨きなどで口腔ケアが十分できている人でも約2000億の常在菌(細菌・真菌)がいると言われています。

ところが口腔ケアが十分できていない場合や、唾液分泌が減ってしまう場合には常在菌が4000〜6000億に増殖すると言われており、これによって口臭が悪化してしまうと考えられています。

口臭が変化する原因を、生理的要因・病的要因などに分類した図

このように一般的な人でも口臭があるのは当たり前ではあるものの、なんらかの病的な状況にあることも考えられます。

このような場合は各診療科に受診することも必要ですし、それ以外の場合は普段のケアが重要になります。

詳しいケアの方法については後ほど取り上げますね。

体臭

続いて体臭ですが、主にこれは皮膚のにおいになると思います。

主に汗腺(エクリン汗腺、アポクリン汗腺)や皮脂腺を通じて体内から体外に分泌される分泌物と、皮膚の表面にすむ常在菌の作用によって体臭がうまれますが、ミドル男性の体臭としては以下のような推移になるのが一般的だと考えられています。

年代による男性の体臭の変化(汗臭・ミドル脂臭・加齢臭)の推移を示す図

普段あまり汗をかくような運動をしない人は汗腺がつまり気味だったり、どろっとしたアポクリン腺から出る汗が多くなったり、ストレスがかかっていて自律神経のバランスが崩れていると汗の分布が変わるような現象が起きて体臭につながる原因になりかねません。

こちらも詳しくは後ほど触れますが、以下ではざっと体臭ケアの参考になるライフスタイルに関する内容をお伝えします。

においを発生させやすいライフスタイル

以下のような生活習慣になっていませんか?

①早食い、胃が悪い ②野菜や海藻、果物などの食物繊維が不足しがち ③便秘をしやすい ④肉食が多い ⑤アルコールをよく飲む、肝機能が悪い ⑥糖尿病やメタボリックシンドロームがある ⑦中性脂肪が高い ⑧汗をかく習慣がない ⑨ストレスが多い、生活時間が乱れている ⑩慢性的に疲れている

このようなライフスタイルはもちろん他の病気につながる可能性も高くなってしまいますし、口臭・体臭にとっても良くないのでぜひこれを機に注意してみてください。

においケアの方法

それではここではもう少し深掘りしてにおいケアをする方法について触れてみようと思います。

口臭ケア

まずは特別な道具などは使わず自然に体に備わった機能として唾液を見直してみましょう。

唾液には洗浄作用・殺菌作用・コーティング作用・pH調整作用・再石灰化作用といったいろいろな作用があり、口臭対策としては重要なポイント。

唾液分泌が低下する原因としては、咀嚼回数の減少、ストレス、水分摂取不足、加齢、薬の副作用などがあるため、それぞれに対してアプローチすると良いでしょうね。

あとは唾液腺のマッサージもおすすめです。

耳下腺・顎下腺・舌下腺それぞれの唾液腺マッサージの方法を示す図

また、歯磨きのタイミングも大事で食後にすぐ磨くのは逆効果だと言われる報告もあったりします。

口臭の原因となるプラークが最も口腔内に増える時間帯は唾液が減少する睡眠中〜朝の起き抜けの間なので、一番のおすすめタイミングとしては就寝前と起床時になります。

セラピスト職だと昼ごはん後に歯磨きをする人もいると思いますが、食後は食べ物の影響で口腔内が酸性に傾くことがあり、その状態で研磨剤や界面活性剤などの入った歯磨き粉をつけて歯磨きをしてしまうと歯のエナメル質を削り、粘膜を傷めてしまうこともあるため、もしするとしても歯磨き粉なしで軽くする、もしくは歯間ブラシと口すすぎくらいにする、くらいでも良いかもしれませんね。

体臭ケア

汗をにおいの原因にしないためには、能動汗腺を鍛えることが重要だと考えられています。

汗腺を鍛える?ということは意味がわからないかもしれませんが、普段から汗をかく習慣を作ることによってさらっとした汗が出やすくなって汗腺のつまりもおこりづらくなって体臭が起こりにくくなるわけです。

おすすめなのは有酸素運動によってじわじわと体温を上げる方法で、岩盤浴やサウナなども有効だと考えられていますね。

あとは食生活やストレスコントロールによる自律神経調整も重要なポイント。

こちらに関しては自律神経の科学ファスティング・腸内環境・脳腸相関ストレスマネージメントの科学も参考になるかもしれません。

あと体臭に関して考えていくと、頭臭というトピックもあります。

特に男性ホルモンが皮脂の分泌を促進するので20代よりも30・40代の男性は要注意ですし、女性でも閉経後や自律神経の乱れによってにおいが気になることはあるでしょう。

頭臭の原因は皮脂の酸化や、皮脂をエサにした常在菌の代謝物によることが多いのですが、気になって洗えば洗うほどなぜか脂臭くなったり、フケが出てしまうこともあるんですよね。

皮脂は洗わなくてもダメ、洗いすぎてもダメ、ということで適度なバランスがなかなか難しいんですが、どちらかというと洗浄力の強いシャンプーで洗いすぎている人が最近多いようなのでたまにお湯のみで洗う、もしくはクレイ(泥)や微生物を使った酵素シャンプーなどの100%天然の洗浄・吸着剤を使うのもおすすめなようです。

参考文献・出典