ファスティング・腸内環境・脳腸相関

AMPKの活性化から見たファスティングの意義と段階的な実践法、リーキーガットを含む腸内環境の話、そして脳と腸が双方向に影響し合う脳腸相関までを整理します。

食事は健康にとってとても重要なのは言うまでもなく、普段から〇〇を食べると良い!のような情報はたくさん巷に溢れかえっています。

ただ〇〇を食べればいい、というような情報は個人の体や嗜好にも影響しますしなかなか一定の見解は示しづらいのが現状かと思います。

ただ逆に食べ物を減らすファスティングに関するエビデンスがいろいろ出てきていたり、食事の栄養だけでなく腸内環境、そして腸と脳の関係について考えられている脳腸相関について理解を深めておくと食事のアプローチの幅が広がると考えられます。

今回はファスティング・腸内環境・脳腸相関についての情報を共有して、健康な食事について改めて考え直してみてください。

ファスティング

ファスティング=断食、というイメージは広がりつつあると思いますが、そもそもファスティングにはどのような意味・効果があって、どのように進めていけば良いのか、についてはまだ理解しきれていない方もいるんじゃないかと思います。

ここではファスティングについての理解を深めていきましょう。

AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)の活性

ファスティングによる大きな効果の1つがAMPKの活性だと考えられています。

AMPKとは「燃料センサー」のような役割を持つ酵素の一種で、必要なエネルギーが足りなくなると活動を始め、全身の細胞に「肉体を効率よく使いなさい」と命令を出すような役割を持っています。

このようにAMPKが活性化してエネルギー代謝の効率を改善できると、ストレスに強くなり、細胞の働きも改善するため、健康寿命の改善や延長効果が得られるんじゃないかとも考えられています。

ファスティングは一時的に体に入れるエネルギー量を制限するわけなので、それによってこのAMPKの活性につながるわけですね。

他にはフィトケミカルと呼ばれる、ポリフェノールのような成分を摂ることでもAMPKの活性につながるとも考えられているので参考までに共有しておきます。

ファスティングをおすすめできないケース

これを聞くとみんなファスティングをするといいんじゃないか!と思うかもしれませんが、やはりリスクになるケースもあるので専門家としてはこちらも理解しておいてもらえたらと思います。

①BMIが18以下 BMIが低いと低カロリーのダメージに体が耐えられない可能性があります。まずは脂肪と筋肉を増やすことを優先しましょう。

②糖尿ぎみな場合 インスリン感受性が低い場合も、断食のダメージで症状が悪化する可能性が高いのでNG。もしする場合は主治医と相談の上、糖の代謝を改善してから実践してください。

このような場合は要注意です。

段階的なファスティング

ファスティング=断食というイメージがありますが、全く食べ物を食べなければ良いというわけでもないですし、少しずつ段階的に試す方法もいろいろあります。

ここではいくつかの手法について紹介していきますね。

・90分ファスティング

これはかなり試しやすいやり方で、いつも朝食を食べる時間よりも90分だけ遅い時間にずらす+いつも夕食を食べる時間よりも90分早い時間にずらす、というもの。一般的なファスティングよりは効果が薄れるものの、お試しとしては良いでしょう。

実際にサリー大学というところで行われた実験があって、研究チームは健康な参加者に90分ファスティングを指示し、食事や運動の指導はなにもせずに10週間の経過を調べました。

すると90分ファスティングを行ったグループは約6割がいつもより食事量が減ったと答え、いつもの時間に食事をしたグループと比べて2倍も体脂肪が減ったというデータがあります。

・朝食だけ抜く

人によっては仕事や生活の状況によって食事の時間を変えることが難しい方もいると思うので、その際には朝食だけ抜く、という方法もあります。

アメリカ国立老化研究所が推奨するファスティング法だと、平均16〜18時間の空腹時間を作るのが基本と言われており、20時までに夕食を終えて、朝食を抜き、12時から普通に食事をするようにするとこの基準を満たしたファスティングができるようになります。

・パーシャル断食

こちらはオリンピック・トレーニングセンターが推奨する方法で「パーシャル断食を実践した者は、筋肉をあまり落とさずに体脂肪を大きく減らすことができた。その上運動パフォーマンスは向上する」とコメントされています。

理想的な手法のように感じますが、実際に実行するのはけっこういろいろ考える必要があります。

  1. 断食をする日は1日の維持カロリーから30〜40%を引いた食事をする
  2. 断食を行うのは1日おきに週に3日で、残りの4日はカロリーを気にせず好きに食べる
  3. 断食の日は最低でも体重1kgあたり1gのタンパク質をとる

アスリートなどに関わりながらファスティングを薦める時は、このような手法もあるので参考にしてみてください。

腸内環境

ここでは改めて腸内環境について考えていきますが、近年「腸管壁浸漏症候群=リーキーガット」という症状が問題になることが増えてきています。

これは腸の細胞に細かな穴が開いてしまう現象のことで、腸の粘膜をつなぐ結着細胞が壊れて、バリア機能が破れた状態を意味しています。

いったんリーキーガットが起きると、腸の穴から未消化の食物やエンドトキシン(毒素)などの有害物質が血管に侵入してしまうことがあって体にとってリスクになります。

このような症状を減らすためにも腸内環境を整えることが重要なので、ここでは理解を深めていきましょう。

腸内細菌

そもそも腸内環境を整えるとは何かと考えると、腸内細菌の状況を改善することだと考えられます。

腸内細菌はヒトの消化器官の中に住み着くさまざまな微生物で、ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌や乳酸菌が有名。

その数はおよそ100兆〜1000兆もあって、これは人体の全ての細胞の数を超えるほどです。

まだその全容は解明されていないものの、腸内細菌は非常に重要なことは知られるようになっており、例えばアミノ酸や食物繊維などを材料にしてビタミンB群やビタミンKといった重要な成分を合成することで主要なビタミン欠乏症から免れることもできているんです。

外敵から身を守る

腸管は栄養の吸収を行うための器官ですが、いっぽうでは細菌やバクテリアなどの脅威にさらされています。

そんな時に腸内細菌がうまく働く必要があるんですが、まず善玉菌が巨大なコロニーを作り、敵に立ち向かうための前線基地を設営。

そこで栄養素をもとにバクテリアなどを駆除する武器を作り出し、腸管からの侵入をブロックします。

それと同時に腸内細菌は食物繊維から酪酸という脂肪酸を生産し、これで有害物質が体内に入り込むのを防ぎます。

先ほどのリーキーガットは善玉菌のような腸内細菌が不足して、一部穴ができてしまっている状態。

よって体を守る意味でも腸内細菌の状況を整えておくことが重要なわけですね。

生活環境の影響

腸内環境を整えようと思うと食事をイメージしがちですが、実は別の生活環境を意識することも大事です。

例えばシックハウス症候群というもの。

アルデヒドのような人工の化合物によって起きる症状を指す言葉ですが、近年では自宅やオフィスに漂うカビなどによって、頭痛や疲労が起きてしまう現象が注目されています。

悪性のカビが増えやすいのは壁や天井の裏で、知らぬ間にコウジカビやアオカビといった菌種がコロニーを形成。MVOCという揮発性の有機化合物を大気中に撒き散らして咳や熱のような炎症症状が起こることもあります。

このように生活環境の中で呼吸をするだけでも細菌が体内に入ることがあって、腸内環境にも影響を与えることがあるわけです。

  • 部屋の換気は欠かさない
  • 水まわりのトラブルはすぐに直す
  • 屋根の雨どいは定期的に掃除する
  • 部屋の湿度は30〜50%に保つ
  • 空気清浄機を置く

このあたりの注意は普段からできると良いですね。

脳腸相関

ここまでは体に関する話が多かったですが、最後に腸と脳の関連についても紹介しておきます。

例えばストレスを感じるとお腹が痛くなったり、下痢や便秘などの便通異常を生じる。

逆に、腸管粘膜の炎症やバリア機能障害によって脳での不安感が増し、行動や食欲などが変化することもある。

このように脳→腸、腸→脳のような関連性が見られることを脳腸相関と言います。

機能性消化管疾患

脳腸相関について考えた時に、よく話題にあがるのが機能性消化管疾患と呼ばれるもの。

こちらは器質的な疾患がないのに腹部症状を生じるもので、実際に患者数も増えています。

こういった患者の多くは病院を受診することも少なく、市販薬で我慢することも多いので、セラピストとして出会う可能性が多い疾患の1つですね。

もし病院を受診したとしても器質的な問題がないので「ストレスが原因ですね」と言われるだけで具体的な治療に結びつかない場合もあるので、腸についての理解を深めることでセラピストでも良いアドバイスができる可能性があります。

ストレスと腸内フローラ

ストレス負荷を受けた腸管では、平滑筋刺激による腸管運動亢進だけでなく、腸内フローラにも変化が生じると考えられています。

例として、宇宙飛行士の腸内フローラの研究では、細菌数は飛行前から変化が見られ、飛行中にはさらに異常が進み、ラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属が減少し、腸内細菌科やクロストリジウム属ウェルシュ菌が増加していたとも報告されています。

腸内フローラの異常によって自閉症の子供などで行動異常が増えたり、この腸内フローラの状況を改善することによって脳の炎症制御効果があるなど、脳と腸が密接に関わっている研究はいろいろ増えてきています。

メンタルへのアプローチを考える時に、カウンセリングや認知行動療法を行うだけでなく、食事によって腸内環境を整えることによって改善する可能性もあるので、意識してみると良いでしょう。

発酵食品・サプリ・食物繊維の効果

最後に腸内環境を整えるために重要な食事について触れますが、まずおすすめなのが発酵食品。

納豆、キムチ、ヨーグルト、チーズなど、発酵食品を摂取することで腸内細菌を増やすことにつながります。

他にはサプリでもおすすめのものがあり、それはプロバイオティクスというもの。

ビフィズス菌や乳酸菌といった腸内細菌を使ったサプリのことで「ビオフェルミン」や「ラクトーンA」という商品が日本では有名なところ。

あとは食物繊維の摂取も重要です。

食物繊維は一般的な栄養としてはそれほど多いわけでなく、お通じの改善やコレステロールの低下が効果としては有名ですが、実は腸内細菌に対する栄養として効果があります。

食物繊維を増やすにはまず野菜やフルーツを増やすのが基本でゴボウ・寒天・海藻・キノコ類、オクラ、りんごなどが手軽に取りやすくておすすめ。

サプリとしても難消化性デキストリンやオオバコ、イヌリン・レジスタントスターチなどがあって必要に応じて試してみると良いでしょう。

まとめ

ファスティング、腸内環境あたりはけっこう奥が深く、食事・栄養を考える時に新しい切り口が見つかると思うので、興味があればより深く調べてみてもらえたらと思います。

参考文献・出典