「〇〇に効果がある」はどう示されるのか(主に自律神経に着目して)

エビデンスのピラミッドと因果推論から客観的な効果の示し方を整理し、さらに現象学・オートポイエーシスを手がかりに、数値化しづらい主観的な変化をどう捉え、どう促すかを考えます。

セラピストとしてクライアントに関わる際には、何かしらの症状を改善する効果を求められると思いますが、意外と「〇〇に効果がある」ということを示すのは難しいんです。

また効果に関して考えると、客観的に数値で変化が出ることもあれば、なかなか数値化しづらいけど主観的に変化が起こることもある。

今回は客観・主観それぞれについて主に自律神経を事例に挙げながら、効果の示し方について学んでみましょう。

客観的な変化について

まず効果を示す際には客観的なデータをもとに、科学的な手法で分析されるのが一般的です。

自律神経のバランスが崩れることによって身体にはいろいろな症状が起こりますが、まず客観的に自律神経の状態を計測する手法としては近年は心拍変動をモニターすることが一般的になりつつあります。

客観的に自律神経を評価すると、交感神経系の機能低下・交感神経系の機能亢進・副交感神経の機能低下・副交感神経の機能亢進というような感じで分析しやすくなりますが、何かしらのアプローチをおこなうことによって変化を起こすことができれば効果があったと示すことができるでしょう。

エビデンスのピラミッド

有名な図ですが、何かしらの効果をエビデンスとして示すための段階をまとめたものがあります。

専門家の意見や目の前の事例をまとめるだけではその他の多くの人に応用するのは正確性に欠けるので、ランダム化比較試験というような手法で検討するのが理想だとされています。

ここから自律神経の改善に関する客観的な効果を示そうと思うと、同じような症状を抱える人を集めてきて、それをランダムに分け、例えば運動のみ・運動+施術のような形で介入の方法を別にすることで、客観的な効果を示す感じです。

因果推論

ここで因果推論という考え方にも触れてみますが、なぜこのような実験が必要になるかと言うと因果関係を示すのがなかなか難しいからです。

例えば因果と似た言葉で、相関というものがありますが、この相関と因果の違いを理解しておくことが重要です。

例えば「朝起きるとニワトリが鳴いている」ということを考えた時に、確かに時間帯として朝であればニワトリが鳴くことは多いと思うので、ここには相関関係があるように考えられます。

ただここでニワトリが鳴かなかったら朝がこないのか?ということを考えると、必ずしもそうではないのでこの間に因果関係はないということになります。

ここから例えば施術によって自律神経が改善するかということを考えると、確かに施術によって改善することもあると思うけど、

  • 他のアプローチと比較するとどうなのか?
  • 施術した内容自体ではなく、施術中にした会話や、施術を機会に普段の生活の意識が変わったことによって改善したのか?

など、他の要素が絡むこともあるので、客観的に施術の効果を示すためには、ちゃんとした実験をすることが望ましいというわけですね。

というわけで自律神経への効果について客観的な効果を示そうと思うと、同じような症状を持つ対象を集めて、そのような方々に対して何らかのアプローチを行なって変化を調査するということが必要になってきます。

また、今回の自律神経も含めて身体の症状においては客観的に数値化できないこともあると思うので、そのあたりについても考えてみましょう。

主観的な変化について

例えば自律神経について考えると、「疲れやすい」「ふらつく」「日中眠い」などなかなか客観的に計測できない症状もあるんじゃないかと思います。

ここでセラピストが関わることで変化を起こせることもあると思いますが、このような主観的症状に対する効果をどう示して良いかということはなかなか奥が深いテーマですね。

現象学

なかなか聞き馴染みがない言葉だと思いますが、哲学的な考え方として現象学というものがあります。

現象学の考え方を示すときに、よくリンゴの認識の例が出されます。

一般的に人はそこにリンゴがあるからそれを認識するという態度をとりますが、逆に現象学的に考えると、人がそこに「赤くて、つやつやした、丸いもの」が見えちゃってるからそこにリンゴがあると認識する、というように逆の考え方をするものです。

なかなか意味が分かりにくいと思いますが、例えば人の体で言うと痛みについて考えてみると、セラピストから見ると大きな損傷もないし、軽く触れているだけなのに、本人はすごく痛がっているというクライアントと出会った経験はないでしょうか?

この場合に痛みについてどう捉えたらいいか迷うこともあるかもしれませんが、現象学的に考えると本人が痛いと言っているのであれば痛みがある、と認識するという感じですかね。

よって自律神経の症状で考えると、客観的な数値に変化がなかったとしても、本人が明らかに症状が改善している!と感じるように情報提供したり、施術をすることができれば、それはそれで十分変化が与えられたのではないか、と考えることができるでしょう。

よって本音で話せる信頼関係を作りつつ、このような主観的な感じ方をしっかり聞き取って効果を判定することもできる可能性があると思います。

オートポイエーシス

もうひとつ、あまり聞き馴染みがない言葉だと思いますが、オートポイエーシスという言葉があります。

オートポイエーシスは生物学から出てきた概念で、自己の内部の変化についての考え方になります。

例えば自転車に乗るということについて考えた時に、自転車に乗れるようになる前はあれこれいろいろ体の使い方を試して時には失敗することもあるけど、一度乗れるようになるとしばらく間が開いても乗れないようになることはなかなかないし、身体の使い方として何かが内部で変化したというような感じが近いかもしれません。

自律神経失調のような体の不調であっても、何度か繰り返すうちになんとなく事前に予兆を感じて、「今無理すると悪化するかもしれない」というような体の感覚が敏感になっていくような感じでしょうか。

体の痛みに関しても、例えば腰痛になりやすい人は繰り返すうちに自然に腰痛になりにくい体の使い方を身につけて予防しやすくなる、というのも近いかもしれません。

このようななかなか客観的に評価しづらいことであっても、主観的な変化が起こることはあると思うので、インタビューやアンケートによってこのような変化を明らかにすることもできるかもしれませんね。

主観的な変化をどう促すか

客観的な変化については施術だけでなく薬や手術など、科学的な手法をもとに分析された様々な情報があると思いますが、後半で取り上げた主観的な変化を促す方法についてはそれほど詳しく知る機会がないかもしれないので、今回一部にはなりますが紹介してみます。

認知行動療法

まずよく取り上げられるのが認知行動療法。

例えば腰痛に関しては『人生を変える幸せの腰痛学校』という本があって、本を読む中で自然と腰痛に対する認識を変えたり、必要な情報を学ぶことで治癒に繋げていくようなものもあって、読書療法と呼ばれています。

この読書療法も一種の認知行動療法で、例えば腰痛になると安静にしていないといけないと思っている人もいるけど、近年の研究だとできるだけ動ける範囲で動いておいた方が良いというエビデンスも出ているので、「腰痛になったけど、できる範囲で体を動かすことで改善してきた」というようなストーリーに触れることで考え方が切り替わってくることもあるように思います。

具体的なマニュアルに関しては厚生労働省のホームページにも記載がありますし、興味がある方は見てみてください。

具体的な認知行動療法の手法は調べればいろいろ出てきますが、根元にはストア哲学という考え方がベースにあったりもするので、治療法の起源のようなものに興味がある方は『認知行動療法の哲学』という本も読んでみてもらえたらと思います。

「闘争」としてのサービス

またセラピストとしてクライアントに関わる時にどのようにすれば主観的な変化を起こしやすいか、ということを考えた時に『「闘争」としてのサービス』という本も参考になります。

セラピストの仕事も考えようによっては一種のサービス業とも捉えられると思います。

なかなか難解な本ではあるんですが、こちらだと高級寿司屋の事例が挙げられています。

一般的にサービスというと「おもてなし」とか「顧客満足」「快適さ」みたいなものが考えられますが、高級寿司屋を例に考えるとちょっと職人が不機嫌そうだったり、ちゃんとメニュー表がなかったり、一見サービスとしては不親切に見えることもあるかもしれません。

でも逆にお客さん側からすると、そのような格式高そうな店だからこそ、自分が少し成長した気分を感じられたりすることもあるでしょうし、そこがサービスは単に相手の満足を提供するだけでなく、お互いの様子を探り合うようなことがあるでしょうからそこが闘争に近いかもしれない、という感じですね。

例えばセラピストの施術においても、クライアントと関わる中でなんとなく質問への返答で普段どのくらい身体を意識しているのか、健康を気遣いながら生活しているのかということは推しはかれてしまうでしょうし、逆にクライアント側から見てもセラピストがどのくらい勉強していて、技術を持っているか、ということも試されるということは起こるでしょう。

もちろんセラピスト自身の考え方や店舗としてのスタンスはあると思いますが、そのようなやり取りが行われることを前提にしながら、クライアントにどのような変化をして欲しいか?ということを意識して向き合うと、提供する情報の質や量、施術内容、継続した関わり方も変わってくると思います。

自分1人だけではなかなか健康につながる行動を意識し続けるのは難しいけど、定期的にセラピストに関わることで意識をし直して行動を変えるきっかけになる、というのもこのような構造に近いかもしれませんね。

まとめ

今回は主に自律神経に着目しながら、客観的・主観的それぞれにおける変化と、主観的な変化の起こし方の事例を挙げてみました。

改めてクライアントにどんな変化を起こしたいか?セラピストはどんな手法・考え方をもとに変化を起こしていくか?ということを考え直すきっかけにしてもらえたら幸いです。

参考文献・出典